伊勢神道と鬼神

人と待ち合わせをしている時に、
図書館で神道五部書を借りて
喫茶店で目を通していたのですが、
興味深い事が書いてありました。

三遠の歴史の深層に関わる記述が
幾つも見つけられたので、
かなりの収穫ですね。

地元でも読む人など殆どいない
レアな文献だとは思いますが、
これらは羽田八幡文庫の本として
所蔵されていたものです。

豊橋市図書館は羽田八幡文庫から
大量に本を確保しているので、
先人の社会貢献活動がなければ、
読まずに終わったのでしょうか。

地元でも郷土史料の本の大部分は
書庫に蔵されているので、
本棚をざっくりと調査して、
必要な情報を探す事が出来ません。

書庫に入って探せられれば良いのですが、
検索をかけて必要な本にヒットしないと、
重要な情報が埋もれたまま終わる可能性が
高そうな気がしています。

神道五部書の『大神宮御鎮座傳記』の中
「伊勢二書皇大神御鎮座傳記」に、

吾亦根国底国与利麁備踈備末物相率主語之故名鬼神

と、国底立神の様々な別名の中に鬼神を挙げ、
この別名の中には更に面白いものもあります。

国底立神とは国常立神の別名であり、
『古事記』では神世七代の最後の神ですが、
伊勢神道の流れを汲む吉田神道では
大元尊神として宇宙本源の神とされます。

この記述から見るに鬼神は悪神でなく、
儒教経典に記された鬼神であるのか、
邪馬台国祭祀の鬼道を指しているか、
複数の可能性が提唱可能です。

『中臣祓訓読』で「人ノ魂ヲ鬼と号づく」と
注をつけているところから察すると、
鬼神は鬼と神の二つを意味していると
部分的に鬼神がこの意味であったとしても、
神の別名とされるのはどうなのでしょう。

度会氏は鬼神の登場する花祭で
榊鬼と問答していますが、
度会氏に湯釜の湯を振りかける神事もあり、
花祭で行われる湯囃子の簡略版ですね。

鎮座傳記には更に興味深い記述も含まれており、

吾是天下之土君也。故号國底立神。

と国底立神を土君としていますが、
奥三河の花祭にも土公神が登場します。

壬申の乱で山奥に隠れた民が鬼道を継承し、
捕らえられて外宮の祭祀をさせられた者達は、
古代神の名を隠し祀ってきたのでしょうか。

榊鬼は神主との問答で負けますが、
この背景は本に書いておきました。
ここの部分を追及していくと、
神道五部書が偽書と批判されたのも、
問題無く解釈できるでしょう。

花祭の真価が外宮の神を祀る
国家祭祀であったのなら、
豊橋公園で発掘される遺跡こそ
国家祭祀の行われた場所であれば、
外宮の根幹の地なのでしょう。

花祭に登場する鬼神の正体は
外宮で祀られる宇宙根源の神で、
花祭の原型は国家祭祀であり、
鬼道は表舞台から消え去ったものの、
この国を支え続けて来たのでしょうか。

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