漢水の女神3の続きです。
於是
屏翳収風、川后靜波。
馮夷鳴鼓、女媧清歌。
騰文魚以警乘、鳴玉鸞以偕逝。
六龍儼其斉首、載雲車之容裔。
鯨鯢踊而夾轂、水禽翔而爲衛。
ここにおいて、風神は風をおさめ、川神は波を静めた。
憑夷は鼓をうち、女媧は清らかに歌う。
文魚は飛びあがって警備し、玉の鈴を鳴らして一斉に行く。
六竜は厳かに首をもたげ、女神の雲の車をゆるやかに引く。
鯨は躍りて左右を守り、水鳥は飛んで衛をなす。
於是
越北沚、過南岡。
紆素領、廻清陽。
動朱脣以徐言、陳交接之大綱。
恨人神之道殊兮、怨盛年之莫當。
抗羅袂以掩涕兮、涙流襟之浪浪。
悼良會之永絶兮、哀一逝而異郷。
ついに北の渚を越え、南の丘を過ぎる。
白い首を傾け、清らかな瞳を向ける。
朱い唇を動かし、男女の交わりの大道を説く。
人と神の違う道を恨み、楽しい時が止まらぬ事を嘆く。
薄絹の袖で涙を隠し、涙はゆったり襟に流れる。
集いが終わるのを痛み、ひとたび去れば世界が異なるのを哀しむ。
無微情以効愛兮、献江南之明璫。
雖潜處於太陰、長寄心於君王。
「愛の言葉には意味がありません、江南の真珠の耳玉を差し上げます。
太陰の世界に潜んでも、心は君王を思い続けましょう。」
忽不悟其所舎、悵神宵而蔽光。
気づかぬ内にたちまちに消え、宵で女神の光が隠れたのを嘆く。
於是
背下陵高、足往神留。
遺情想像、顧望懐愁。
かくして、低い水辺を背じ高みに登り、足は往けども心は留まる。
募る想いは女神の姿を思い描き、懐かしみ愁う。
冀靈體之復形、御輕舟而上遡。
浮長川而忘反、思緜緜而増慕。
夜耿耿而不寐、霑繁霜而至曙。
女神がまた現れる事を願い、小舟で流れを溯る。
川に長く浮いて帰ることを忘れ、恋い慕う気持ちはますます募る。
夜がふけても寝付けず、激しい霜に身を濡らし朝を迎える。
命僕夫而就駕、吾將歸乎東路。
攬騑轡以抗策、悵盤桓而不能去。
御者に命じて車の準備をさせ、ついに東への帰路につく。
馬のくつわを持って鞭打とうとするが、胸が痛み去ることができない。