漢水の女神4

漢水の女神3の続きです。

於是
屏翳収風、川后靜波。
馮夷鳴鼓、女媧清歌。
騰文魚以警乘、鳴玉鸞以偕逝。
六龍儼其斉首、載雲車之容裔。
鯨鯢踊而夾轂、水禽翔而爲衛。

ここにおいて、風神は風をおさめ、川神は波を静めた。
憑夷は鼓をうち、女媧は清らかに歌う。
文魚は飛びあがって警備し、玉の鈴を鳴らして一斉に行く。
六竜は厳かに首をもたげ、女神の雲の車をゆるやかに引く。
鯨は躍りて左右を守り、水鳥は飛んで衛をなす。

於是
越北沚、過南岡。
紆素領、廻清陽。
動朱脣以徐言、陳交接之大綱。
恨人神之道殊兮、怨盛年之莫當。
抗羅袂以掩涕兮、涙流襟之浪浪。
悼良會之永絶兮、哀一逝而異郷。

ついに北の渚を越え、南の丘を過ぎる。
白い首を傾け、清らかな瞳を向ける。
朱い唇を動かし、男女の交わりの大道を説く。
人と神の違う道を恨み、楽しい時が止まらぬ事を嘆く。
薄絹の袖で涙を隠し、涙はゆったり襟に流れる。
集いが終わるのを痛み、ひとたび去れば世界が異なるのを哀しむ。

無微情以効愛兮、献江南之明璫。
雖潜處於太陰、長寄心於君王。

「愛の言葉には意味がありません、江南の真珠の耳玉を差し上げます。
太陰の世界に潜んでも、心は君王を思い続けましょう。」

忽不悟其所舎、悵神宵而蔽光。

気づかぬ内にたちまちに消え、宵で女神の光が隠れたのを嘆く。

於是
背下陵高、足往神留。
遺情想像、顧望懐愁。

かくして、低い水辺を背じ高みに登り、足は往けども心は留まる。
募る想いは女神の姿を思い描き、懐かしみ愁う。

冀靈體之復形、御輕舟而上遡。
浮長川而忘反、思緜緜而増慕。
夜耿耿而不寐、霑繁霜而至曙。

女神がまた現れる事を願い、小舟で流れを溯る。
川に長く浮いて帰ることを忘れ、恋い慕う気持ちはますます募る。
夜がふけても寝付けず、激しい霜に身を濡らし朝を迎える。

命僕夫而就駕、吾將歸乎東路。
攬騑轡以抗策、悵盤桓而不能去。

御者に命じて車の準備をさせ、ついに東への帰路につく。
馬のくつわを持って鞭打とうとするが、胸が痛み去ることができない。

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