日本で初めて「経済」の語を用いた文献では
経済が縦糸と横糸の織物で例えられていますが、
プラトン全集二巻にある『政治家』には、
若きソクラテスがエレアの地から来た客人に
政治を航海や機織りに例え説明されています。
政治家と機織りの共通点を挙げろと言われると
人によって違った回答になると思いますが、
組み合わせて防るものを作りあげる
衣類の製作術と政治との関係が、
ここで詳しく説かれていきます。
機織りは縦糸と横糸を組み合わせますが、
様々な国の政治と同様、その出来は様々です。
客人は硬い縦糸を勇気に、
柔らかい横糸を節制に例えます。
剛の徳が支配的になると必要以上の欲にかられ
戦争に走った結果、祖国を破壊し、
奴隷として国を手渡す事になり、
柔の徳が支配的になると平和を愛しても
都合の悪い事を嫌い侵略者の自由にされるとします。
この後にも縦糸と横糸の詳しい説明が続くのですが、
資質のある人物をそれぞれの徳を伸ばす教育をし、
リーダーが必要な時は両方の資質を持つ人を監督者に選び、
多数を必要とする場合は両者を混ぜる事を提案します。
人間にも精神と肉体がありますが、
魂の永遠的な部分を神的に結びつけ、
動物的な部分を人間的に結びつけるための
政治家と善き立法者による教育を王の術とします。
王の仕事はこの二つを結びつけるために
美や善について共通の思いを持たせる事で
最も壮大にして優秀な織り物を仕上げ、
幸福な国家が生じる事を一つも取り残さず、
国内の全員を包み込む統治・監督を
目的とすると締め括っています。
これを見ると日本は戦前・戦後で
剛と柔の両極端にブレた感じがしますが、
東洋思想の十八番である陰陽論は
孔子が様々な経典で詳しく語っているので
比較検討するのも面白そうですね。
プラトンの本は儒教の本と同様に
翻訳者によって理解に差があるので、
原文を深く理解していない人の翻訳は分かりにくく、
流石にギリシャ語は学んでも仕様頻度が低すぎるので、
英語が読める人は英文にあたった方がベターです。
http://classics.mit.edu/Plato/stateman.html
英語の本を読む前に日本語訳を読んでおくと
理解しやすくなるのでオススメですが、
『政治家』はプラトン全集にしか日本語訳がなく、
購入しようとすると古本の値段がヤバいです。
大して難しい英語ではないので粘れば読めますし、
学生であれば在学中に二~三千冊は読むと良いので
この程度の知的鍛練はしてみる価値はありますね。
社会人になって本を読む時間がないなどは
仕事の出来ない人の言い訳に捉えられかねないですが、
なぜか在学中より遥かに本を読む羽目になっているので
学生の頃に多読をしていた事に助けられています。
国家論のみでなく個人でも勇気と節制が必要で、
交感神経・副交感神経のバランスが悪いと健康を害します。
男女関係を初めとして親子、上司部下などの
実社会の様々な関係にも通じる話なので、
いきなり壮大な話から始めるのではなく、
身近なところから深めていくのが儒教で言う近思です。
それぞれの弱みを強みで補完して相乗効果を生む
顕著な事例はトヨタ自動車でしょうか。
トヨタは浜松と豊橋の中間の湖西市から
世界的企業に飛躍していきましたが、
浜松は動きを出すのには強くても維持には弱く、
豊橋は継続はするが石橋を叩いても渡らないと言われます。
興味深い事にトヨタは自動車を作る前、
機織り機の開発・製造をしていました。
東日本と西日本も特性が違い、東洋と西洋も違います。
アレクサンダー大王は東西融合のヘレニズム文化を作り、
世界規模での大きな功績を残しましたが、
日本の中心地である三遠の古代王朝は、
東西を高度に統治していたのでしょう。
現在では行政区分により豊橋と浜松は二分され、
文化的にも断絶していますが、
東の強みと西の強みを高度に織り上げる
優れた文明をもたらす雛型を求めるのであれば、
古代王朝のように三遠全体を一つのエリアとして
特性を生かした運営を考えるのが
良いのではないでしょうか。