『エノク書』には堕天使が人間の娘に生ませた巨人族が
穀物を食らい尽くして共食いを始めた事が記され、
ユダヤ教で巨人が悪者とされた事を見る事ができます。
ギリシャ神話の天上の火を盗み人に与えたプロメテウスは、
オリュンポスの神々が戦ったティターン(巨人族)の一柱で、
クロノスと戦い支配権を手に入れたゼウスに罰をうけます。
クロノス率いるティターンとの戦いは
ティタノマキアとして後世に伝えられ、
オリュンポスの神々の正統性が主張されますが、
ヘシオドスの著した『仕事と日々』には、
クロノスの時代の人間達は悩みも苦労も悲嘆も知らず、
神々と娘となることなく暮らしていたとしています。
エノク書に記された堕天使のもたらした天上の知恵が
プロメテウスの盗んだ天上の火に対応しているのであれば、
ゼウスは聖書の神と同一の存在の可能性が高そうです。
ペルシャによりバビロニア捕囚から解放されたユダヤ人は
ペルシャの国教ゾロアスター教の影響を多大に受け、
ヘレニズムの元でギリシャ神話とも接点を持ちます。
ゼウスは謀略と武力で支配権を手に入れますが、
これが人類の苦悩の時代の始まりであるならば、
ティターンによる統治とどちらが良かったのでしょう。
古事記ではイザナギ神話や国譲り神話で
雷の神が登場していますが、
ゼウスもティタノマキで雷を用いています。
ゼウスは岩戸から出てきた太陽神に類似する
神話が語り継がれる存在ですが、
諸々の災いが出てきた中で
岩戸の中に残された希望こそが、
太古の太陽神であったのでしょうか。