神道五部書の一書『宝基本記』に、
金神の名を見つける事ができます。
月天子天地開闢氣形賃
末相離是名渾倫所顕尊形是名金剛神
金神生化本性万物之惣躰也
謂人受金神之性須守混沌之初云云
故敬信神尊佛清浄為先云云
金剛はダイヤモンドの事ですが、
金神となると意味が変わるので、
同一の神なのかは微妙ですね。
金神が万物の総体とされるのは、
どこから着想を得たものでしょうか。
金神と言えば陰陽道の最悪の祟り神、
艮の金神が存在しています。
花祭の鬼神は九鬼文書に記された
ウシトラコンシンの事なのか、
鬼神の名も『宝基本記』に登場します。
悪不浄之者鬼神所悪也
神道で不浄を悪とするのは
知られてはいるところですが、
神ではなく鬼神がにくむとする
伊勢神道の記述はマイナーです。
ここに登場するの神である鬼で、
豆を撒かれる鬼ではないので、
鬼を神とする思想が度会氏には
存在していた事になるでしょう。
奥三河には月の地名がありますが、
古事記では殆どない月神の記述に
金神が見えるのは興味深いです。
ギリシャ神話で対応する神はハーデスで、
冥界を司っていても悪神ではないのですが、
日本神話の月読命は神殺しの悪者扱いです。
この神殺し神話に類型したものは
海外にも存在するのですが、
月読命のような格の高い神が
神殺しをしている訳でもなく、
この神に対応させた理由は何でしょう。
度会神道は抑圧された先住民族の神々を
何らかの形で復権させる意図があり、
時代の変化に対応させて教義を整えたのか、
この観点からの神道五部書の研究が
進んでいく事を期待しています。
断片的な記述から結論に結びつけるのは
強引な部分があるのは承知していますが、
資料の少ない古代の実相を追及するのは
想像以上の困難があります。
仮説を立ててもそれを検証するための
基礎データの収集にかなり労力を使います。
在野の研究としてはそこそこの成果を
出している方であると思っていますが、
資料収集に大金をかけられれば、
もっと精度の高い研究になるとは思います。
まあフィールドワークが主体なので、
本も多少は読み込んでいる方だと思いますが、
取材費の方にコストがかかっていますね。