笠置寺で最大の見物が焼けた弥勒菩薩の
磨崖仏(まがいぶつ)ですね。
高さ15mもの巨石に彫刻された菩薩像が
戦火により表面が焼け崩れた跡が見え、
古の姿がどのような物であったのかは、
やはり大勢が関心を持っている事で、
既に研究がなされています。
弥勒磨崖仏の前に正月堂があり、
中に入ると青白い光が写真を照らし、
平成22年に特殊カメラと技術を用いた
弥勒磨崖仏の調査で発見された
最初の彫刻線をデジタル処理した
写真を見ることができます。
弥勒菩薩は弥勒石に彫られていますが、
文殊石、薬師石と共に三つの巨石が並び、
文殊・薬師と来れば徐福の系統の信仰です。
巨石信仰は縄文から存在していたので、
徐福より古い聖地でもあるでしょうが、
徐福系の弥勒信仰の菩薩像であったなら、
一神教系の弥勒菩薩信仰から見たら、
焼きたい気分になりそうではあります。
徐福は紀元前の人物なので直近を見ると、
新羅の花郎(ファラン)が弥勒信仰で、
同時代の百済にも弥勒信仰があり、
両者は敵対関係であった事を考えると、
両者の弥勒信仰は同一だったのでしょうか。
弥勒(ミトラ)信仰の歴史は非常に古く、
アレクサンダー大王もミトラの生まれ変わりを
自称していたと伝えらえています。
ゾロアスター教はアレクサンダー大王が
唯一徹底的に弾圧した宗教とされますが、
ユダヤ教も共に弾圧されたと考えています。
ミトラはペルシャでゾロアスター教に
取り込まれて別の神となっており、
キリストや阿弥陀如来に繋がりますが、
二柱のミトラの抗争が笠置寺にも
見えてくる感じがしますね。
二系統の太陽神が存在していますが、
騙して強引に引きずり出した太陽神は、
本来の太陽神なのでしょうか。
大王は様々な宗教に対して穏健で、
相応の理由がなければ弾圧せず、
ペルシャ人であると言うだけで
差別をしてはいませんでした。
旧約聖書を見ると他の信仰に対しては、
徹底的に残虐な行為を要求しているので、
互いに磨き会うヘレニズム世界からは
危険な集団と見られた可能性があります。
自らの勢力下に入らない神々の存在を
悪魔扱いする事で残虐な行為を正当化し、
自然や動物、異民族を差別対象として
支配・略奪してきた歴史の流れを見ると、
大王による弾圧も一定の整合性はあります。
ここ数百年の歴史を振り返えると、
この思想をベースに植民地拡大や
環境破壊などが行われており、
ヘレニズムをもう一度見直す
必要のある時期ではないかと、
磨崖仏を見て思索に耽ってきました。
歴史を知る事で同じ文化財を見ても
違った感覚を得る事が出来ますが、
この磨崖仏は見る価値がありますよ。