田の神と山の神

日本の農耕では山の神が降りてきて
田の神となると言う信仰がありますが、
強ち間違いではないかも知れません。

山に降った雨が川に流れて
田を潤わせていきますが、
日本列島は山が険しく、
森の保水力が重要となります。

山に森が存在する事により、
雨は山の斜面を一気に流れず、
一時的に大量の水が流れて、
その後に川が渇れ果てます。

山の森では樹木の落ち葉等から
金属元素(ミネラル)が溶け出し、
川に流れて行く事で耕作に必要な
肥料等をも供給していました。

森に生存する農薬の効果をもつ
物質を作る植物も研究され、
代々伝承されてきたそうです。

クスノキやサクラ葉に含まれる
除虫・殺菌成分は有効に活用され、
自然界への深い理解こそが、
人として必要な知であった事を
伺う事が出来ますね。

人から人に伝えられる知恵は
継承が途絶えた時に問題が起こり、
花祭も動画に保存されていますが、
見ただけで習得出来ないのは、
習い事の世界では普通ですね。

山の木々が農業に必要な水や肥料を
与えてくれる存在であったなら、
この働きを神として扱う程に、
農耕に重要であると言う事が
理解されていたのでしょうか。

豊橋市多米町はその名の通り
広大な田んぼが存在しますが、
山から流れてきた水が田を潤し、
ここで農耕祭祀が行われていた
独特な雰囲気を醸し出しています。

農耕は人間の生命を培うために、
植物の生命を育む行為なので、
生命への深い理解や哲学が関わり、
工業製品として効率化を追及する
現代の姿に問題はないでしょうか。

現代の農業は化学肥料に依存し、
植物に特に必要な窒素・リン・カリも、
自然からの供給では無くなっています。

窒素も一種類ではないので、
ただ単に投入すれば良いかは、
難しい問題がありますね。

大気から窒素を抽出する作業時に
大量の石油が使用される事から、
窒素肥料は石油で出来ているとされ、
リンやカリは鉱石を採掘して精製し、
肥料に加工され石油を使い運送します。

エネルギーを牛耳る事が戦略として
重視されてきた20世紀の負の遺産は、
農業にも深い影響を与えましたが、
海外依存度の高い農業の在り方は、
非常にリスクの高いものです。

メソポタミアでは人口が増えて
山の木を大量に伐採した結果、
土壌侵食による文明の危機を
迎える事になったそうですが、
歴史に学ぶ事は多いですね。

自然界に神を見る先祖の思想には
想像以上に奥深い叡知があり、
現代人は浅知恵で理解する事が
出来ていないだけかも知れません。

自然を搾取対象とする特権階級に
人類を置く文明の在り方は、
一神教の神の座に人が座った
無責任な物なのでしょうか。

農家の高齢化などの問題により、
数年先に食料が確保出来るかすら
分からない状況になっていますが、
自然を搾取対象とする近代文明を
根本から見直さずに取り組めば、
浅い物となる危惧をしています。

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