橘逸勢を祭神とする橘神社は、
遠江・三河の国境本坂峠の東麓、
愛宕山の中腹に鎮座しています。
この神社は村人達によって
ひっそりと祀られ続け、
永く公的の祭祀に預からない
不遇な経緯を辿っています。
本坂村出身の神主である
竹平主水(気吹)翁の
記き残した記録の中に、
従四位下但馬権守橘逸勢朝臣、
承和九年幽世を去られ候
節(御遺骸を)埋候場所ニ
山ノ神ト奉斎シ来リ候、
此宮御霊代ハ御鏡なる所、
女化年中ニ盗取られ、
是迄行方不相知候事。
と逸勢の遺体を埋葬した場を
「山の神」と称して祭祀し、
御霊代が古鏡であった事が
明記されています。
逸勢の名を隠していたのは
朝廷に隠れて祀ったからか、
この話は本坂の里人には
公然の秘密とされていた事が
現地人から確認されています。
裕福でない村人達により
密かに祭られ続けたなら、
相応の人物であった事が
認知されていた事でしょう。
朝廷に隠していた理由が、
捏造された歴史に抵触する
重要な何かが現地の人達に
認知されていたからなのか、
この村社が訴えているのは
重要な何かなのでしょう。