室町時代の臨済宗の僧が著した
『万里集九』の「梅花無尽蔵」には、
道真公の天神の名には神号の他に
五つの名と姿があるとしています。
第一に弥勒菩薩のいる都率天にあれば
好玄と称し千手観音の化身となり、
第二に帝釈天のいる帝釈宮に居れば
道直と称し大日如来の化身となり、
第三に閻魔大王のいる琰羅天に住すれば
良道と称し地蔵菩薩の化身となり、
第四に京都の北野に降れば
道信あるいは道実と称し文殊菩薩の化身となり、
第五に九州の安楽寺に止まれば
道真と称し十一面観音菩薩の化身になるという。
大日如来と言えば密教における
ヒエラルキーのトップなので、
左遷されて怨霊化した人物が
ヨイショされただけの話なのか、
背景が気になるところです。
室町時代と言えば南朝の直後で、
南朝までの天神信仰の在り方を
隠蔽する目的が存在した可能性は
ゼロとは言い切れませんね。
南朝は伊勢神道を重視しており、
南朝の真言密教系修験道寺院が
臨済宗に改修させられた事例が
三遠で数多く見受けられますが、
これも臨済宗の書であるなら、
隠蔽工作の意図がありそうです。
人なのにここまで言われた背景を
ここから読む事が出来ないのは、
既に広がっていた天神信仰を
本質から遠ざける作業がなされ、
現代の姿となったのでしょうか。