崔仁鶴(チェ・インハク)著の
『朝鮮伝説集』に目を通すと、
神武王の話を知る事が出来ます。
新羅末期の神武王時代、
王は東海から攻めてくる
倭の海賊に悩まされており、
倭賊は長鬐岬と竹辺岬の間の
十二個の島を根拠にして、
村を襲い暴虐を尽くします。
神武王は在位一年ほどの間に
倭賊の侵入に対処しますが、
重病にかかって死を迎えた時に、
倭賊を滅ぼさず死ぬのは口惜しい、
龍になり必ず十二の島を沈めると
遺言を残したとされています。
王が死んだ後のある晩に、
颱風が吹き海は波浪で乱れ、
雷と稲妻が轟くなか、
黒い雲の中から龍が現われ、
尾で十二個の島を叩き、
倭賊を全滅させたそうです。
日本と新羅の関係が悪かった
伝承が双方に残されていますが、
会昌の廃仏が行われた時期に、
とても史実とは思えない伝承が
残された背景が気になります。
ここでは日本ではなく倭と、
壬申の乱よりも前の国名に
変化しているのも問題です。
会昌の廃仏の周辺の遣唐使が
新羅に助けられている事から、
意図的に隠蔽された領域が
存在していそうですが、
新羅側の遣唐使の話には、
日本側との矛盾が存在します。